東京地方裁判所 昭和44年(ワ)205号 判決 1969年9月16日
原告 佐藤文枝
<ほか一名>
右両名訴訟代理人弁護士 西村史郎
被告 森宮満起
<ほか一名>
右両名訴訟代理人弁護士 岡琢郎
主文
別紙物件目録記載の土地、建物を競売に付し、その売得金を原告らおよび被告ら各四分の一に分割せよ。
訴訟費用は被告らの負担とする。
事実
第一当事者双方の申立
原告らは主文同旨の判決を求め、被告らは「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求めた。
第二請求の原因
一、別紙物件目録記載の土地、建物(以下本件土地、建物という。)は、もと訴外森宮茂吉の所有であった。
二、茂吉は、昭和三七年一〇月五日、東京法務局所属公証人佐藤佐一郎に対し、証人佐藤進、同猪瀬文雄立会のうえ、本件土地、建物を原告両名および被告両名に均等の割合で遺贈するとの遺言を口授し、同公証人はこれを筆記して昭和三七年第二、一二七号遺言公正証書を作成し、遺言者および証人に読聞かせてその署名捺印を受けたうえ自らこれに署名捺印した。
三、茂吉は昭和三八年二月一一日死亡した。
四、右により原告らおよび被告らは本件土地、建物につき持分各四分の一の所有権を取得したことになり、その所有関係は共有であるところ、本件土地、建物の分割について協議が調わず、かつ、本件土地、建物は現物をもって分割をなすことができないか、若しくは分割により著しくその価格を損するものである。
五、よって、本件土地、建物を競売に付し、その売得金をもって原告らおよび被告らに各四分の一の割合で分割することを求める。
第三請求の原因に対する答弁
請求の原因第一、第三項の事実は認め、同第二、第四項の事実は否認する。
第四抗弁
かりに右公正証書作成の際遺言者茂吉の口授があったとしても、同人は当時意思能力を欠いていたものであり、その遺言内容は遺留分を侵害するものである。加えて、右遺言作成には受遺者たる原告佐藤が立会っていた。したがって、右公正証書による遺言は無効である。
第五抗弁に対する答弁
抗弁事実中原告佐藤が立会っていたことは認め、その余の事実は否認する。
第六証拠関係≪省略≫
理由
本件記録によれば、原告らは被告らを相手方として提起した東京地方裁判所昭和三八年(ワ)第三、九〇七号事件において、本件土地、建物につき原告らおよび被告らが各四分の一の持分権を有することの確認を求め、同裁判所は原告らの請求を認容して原告ら勝訴の判決をしたこと、被告らはこの判決を不服として東京高等裁判所に控訴したが、同裁判所は昭和四二年一〇月二四日終結した口頭弁論に基づき右控訴を棄却する旨の判決をしたこと、被告らはこの判決にも不服があるとして最高裁判所に上告したが、上告を棄却され、右控訴審および第一審の判決が確定したことが認められる。したがって、原告らと被告らとの間においては、右判決の既判力により、前記口答弁論終結時以前の事由をもって右持分権に反する持分権を有することを主張できない理であるし、その後の持分権の変動について主張立証がないから、現在も、本件土地、建物につき、原告らおよび被告らが各四分の一の持分権を有するものといわなければならない。
原告らおよび被告らの右所有関係は共有と認められるから、共有者である原告らは被告らに対して共有物たる右土地、建物の分割を請求することができる。
そして、当事者間に分割の協議が調わないことは弁論の全趣旨により認められるから、原告らは裁判上右共有物の分割を請求する権利を有する。ところで、本件建物がこれを四分割して、それぞれ区分所有権を有するような構造を有するものであることについては主張立証がないから、区分所有権の客体とならないものとみなす外なく、したがって本件建物を現物をもって分割することは法律上不能である。また、本件土地は、法律上分割することは不能ではないが、これを四分割するときは、原告らおよび被告らの取得する部分はそれぞれ六坪余りの狭小なものとなる。しかも地上にある本件建物の分割が法律上不能なのであるから、本件土地の分割は著しく価格を損する以外の何物でもなく、したがって本件土地の現物分割は不相当である。
以上により、本件土地、建物の分割としては、代金分割の方法による外はないと認められるから、本件土地、建物を競売に付し、その売得金を原告らおよび被告ら各四分の一に分割することを命ずる。
よって、原告らの請求を認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岩村弘雄 裁判官 堀口武彦 小林亘)
<以下省略>